今回、3月18日のダイヤ改正で、山手線ダイヤは大きく変化した。しかし、その変化を一般の乗客が実感することは、まず無理だろう。逆に、その実感できない改正がなぜ、大きなダイヤ改正なのか……。まずは改正の内容をJR東日本の東京支社運輸車両部輸送課の担当者に解説してもらった。

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| E231系になり高架線を駆け抜ける走行音も軽快になった(五反田) |
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「今改正では、信号方式が従来のアナログ方式のATCからデジタルATCになったことと、車両が205系からE231系に完全に置き換わったことを受けて、実施しています。それによって一周の時間を短くしたことと、ピーク時にヘッドカット(運転間隔の短縮)も実現しました。一周あたりの時間短縮は1分〜1分40秒で、朝ラッシュ時の8時台に外回りの上野から東京方面に向けて1本増発しています」
ちなみに、山手線における朝ラッシュは、8時〜9時をピーク1時間とし、この間に混雑率が最も高い数値となる区間とその数値(2005年度)は、外回りが上野−御徒町間で216%、内回りが新大久保−新宿間で178%と公表されている。
しかし、1分縮まったと言っても、環状運転の山手線に一周乗り続ける乗客などまずいない。必然としては最大半周であり、短縮時間は30秒となる。大多数の利用者は、その半周すらもすることは稀である。また、増発されたと言っても、今まですでに1時間に24本も運転されていたのだから、これまた、20分間隔が15分間隔になるような実感はあるまい。
では、なにが大きな改正だったかと言えば、最初に増発であるが、最混雑時間帯に11両分の輸送力を増やせたことが一つ。宇都宮・高崎線、常磐線方面から都心に通勤する人々がどっと山手線外回りと京浜東北線南行に流れ込む上記、上野−御徒町間に照準をあわせて外回りを1本増発、1時間に25本運転とした。まったく単純に計算すると、11両編成の定員は1,752人で、旧状は24本運転の平均が216%とのことだから1本あたり3,784人となり、1時間に90,824人の乗車と計算できる。9万を超すこの人数を増発後の25本で割ると、1列車に3,633人となり、混雑率は207%に下がる。
従来の1時間24本運転は2分30秒間隔の運転だったが、25本運転では一部で2分20秒間隔に詰めている。上野駅で地下通路や大連絡橋から3・4番線ホームにあふれてくる人波を見ると、これもまた10秒という時間でも、おろそかにできないような気がしてくるし、実際にそうなのであろう。
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| 日中も4分間隔で発着する坦々とした流れにも絶えず監視の目が光る(品川) |
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山手線においてラッシュ時の増発は、ピークの裾野部分では1988年(昭63)7月の全面205系置換え時に内外とも2本ずつ増発され、2分30秒間隔の時間帯が広げられた。しかし、ピーク真ん中の増発、2分30秒間隔からのヘッドカットはJRとなって初めてのことで、国鉄時代にさかのぼっても、もはや記録を探すのも困難なほど時間が過ぎたことであるらしい。
後述するデジタルATCの効率的なブレーキと、E231系の205系に対する軽量化効果で加速力が高まったことで、一周の所要時間も縮まった。山手線一周は60分と言われてきたが、じつは1日のうちに3パターンがある。ダイヤは、運転上の拠点である大崎を起点(一般の下りに該当するのは外回り)に作られている。そして、日中のダイヤをb速と称し、大崎の発車から到着までは秒単位を省略して約60分、朝ラッシュ時はc速といい約63分、夕方ラッシュ時はd速で約62分だった。これらは、おもに停車時分の差から生じる。このほか、早朝・深夜の閑散時用にa速という種別があり、b速よりも速いのだが、山手線には適用がない。
この各種別が改正後には、b速約59分、c速約61分、d速も約61分(d速のほうが20〜30秒短く、60分台)となった。以前、デジタルATCの導入計画が発表され、マスコミ報道されたとき、「山手線がその歴史上で初めて一周1時間をきる」と記されている。注目すべきは日中のb速59分運転で、それは大崎を出て一周し大崎に戻ってくるまでの時分であり、大崎発から一周後の大崎発までを計測すると、ちょうど60分の運転となった。つまり、きっちり1時間単位でダイヤがそろうのである。その成果として、一周ごとに1分ずれたり、そのための調整の労を要することがなくなった。平日ダイヤで1時間あたりを見ると、以前は16本や17本とばらつきがあったが、改正後は10〜16時台が毎時15本となっている。日中は等時隔になった代わりに、その時隔は少し開いた。
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| 線路上空に駅ビルが建ち湘南新宿ラインも充実。山手線の車窓は絶えず変化を続ける(恵比寿) |
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| 駅の発車メロディをかすかに聞き加速音が近づいてくる(駒込−田端) |
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土休日の場合は、行楽や買い物の動きが活発になるため、朝晩よりも日中ダイヤのほうが手厚く、3分間隔を主体に一部に3分30秒間隔を混ぜて微調整し、9時台から18時半にかけての長い時間、1時間に19本をパターン運転している。
なお、平日は夕ラッシュの時間を過ぎたら、これまではd速からb速に切り替えていたが、今改正では夜間もd速を維持することにした。終わらないラッシュにあわせて、回復余力をもたせたという。また、運転間隔も、ときに6分程度開く場面があったが、これを調整して4分30秒間隔で並べることとし、「必要な時間に厚い配列」を実現した。
山手線で朝、最も目覚めの早い列車は、平日・土休日とも外回りは池袋発4時26分、内回りは大崎発4時30分。また、最終は外回りが品川着1時14分、内回りも品川着で平日1時19分、土休日1時18分。この間、終日の運転本数(周回する列車は大崎→大崎で1本と数える)は、平日は外回りが328本、内回りが322本。以前に比べて外回りは朝ピーク1本の増発や夕方の運転間隔調整で数字は変わらないが、内回りは日中の運転間隔が広がり326本から4本減少した。土休日についても、外回りは297本で変わらないが、内回りは291本から5本減少して、
現在は286本となっている。
一方、時間短縮を積み上げた結果、外回りはピーク時の出庫本数25編成を変えることなく1本の増発を実現した。内回りはピーク1時間24本の運転を変えていないが、所要本数は25編成から24編成に減らすことができた。夕ラッシュ時も、内回りの所要20編成は変わらないが、外回りは21編成から20編成に1運用減少した。日中は外・内回りとも16編成必要だったものが15編成となり、計2編成減少している。現在、東京総合車両センターに所属する山手線のE231系は52編成で、従来はピーク時50編成の使用だったから、残り2編成。検査入場があるから、実質的な予備は1編成だけと言ってもよかっただろう。捻出された編成も予備に充てられ、異常時の備えとして増した安定感は大きそうだ。日中の予備車増加は、検査や清掃のスケジュールの緩和にもつながる。
こうして聞くと、決して旧ダイヤに1本をねじ込んだ程度ではなく、終日でガラリと変わった“刷新”とも言えるダイヤ改正だったとわかる。
ちなみに最も長距離走行となる運用は、改正前は平日ダイヤの01G外回り運用で、早朝の大崎出庫、深夜の池袋入庫で19周半し、走行距離668.9kmだったが、改正後は編成ごとの走行距離が延びた結果、平日外回り71G運用、品川の留置線から出庫して品川発4時24分から大崎着1時21分で東京総合車両センター入庫まで、じつに20時間57分、合計20周と1駅を走る696.4kmとなった。
ところで今回、山手線各駅のホームに掲示された発車時刻表の様子が一変した。以前は、全列車の時刻が掲示されていたのだが、それが始発の4時台から3時間と、終電の1時台までの3時間が掲示板の下方にささやかに示されるだけで、7〜22時台の記載が消えた。代わって画面の大半は、半周ぶんの各駅ごとの出口や乗換え路線、階段・エレベータ・エスカレータの案内となった。
時刻表を見る暇もなく次々に電車はやってくるし、また、ホームのLED発車案内はATOS(東京圏輸送管理システム)に直結して次の電車の時刻を掲示するなどの新たなインフラが整ったため…という。それにしても、全く同じパターンで統一された時間帯だけではなく、朝ラッシュから夜まで時刻表が消えてしまったのは、じつは非常に大きく、前代未聞の変化なのではないだろうか。 |